犬の体調不良

愛犬に元気がないのは体調不良のサイン?動物病院受診の目安

「急に下痢や嘔吐が始まり食欲がない」「呼吸が苦しそう」「けいれん発作を起こした」そんなとき、動物病院に行くか迷う飼い主さんはあまりいないでしょう。

しかし、「いつも元気いっぱいの愛犬がなんとなくおとなしい」「何となく様子がおかしいかも?」といった場合には、動物病院の受診を迷うことも多いかと思います。ちょっとした変化が病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。

愛犬の体調不良…元気がなくなる病気は多い

病気の中には特徴的な症状として嘔吐や下痢などの消化器症状が出るもの、咳やくしゃみなどの呼吸器症状が出るもの、けいれん発作や起立・歩行困難などの神経症状が出るものなど、どこの病気かがわかりやすいものもあります。しかし、いきなり症状が出ず、最初は元気がなくなるだけの病気も多いため注意しましょう。

例えば、貧血は重度になると口腔内の粘膜が白くなったり、原因によっては血の色をしたおしっこをするなどの症状が現れることもあります。しかし初期症状は元気がなくなったり、散歩で疲れやすくなるだけでその他飼い主さんの目から見て明らかな症状は現れません。しかもその原因は自分の免疫が赤血球を攻撃して壊してしまう自己免疫疾患やお腹の中にできた腫瘍から出血する腹腔内出血といった怖くて緊急性の高い病気であることも多いです。

また、首や腰の椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患の場合も症状が軽度な場合はあまり動きたがらない以外の症状がない場合もあります。しかし症状が軽度に見えても軽い病状であるとは限りません。検査をしてみると脊髄神経の圧迫は中等度から重度であることも十分に考えられるからです。そのような場合には内科管理が困難であることが予想されること、今後の神経症状の悪化の懸念があることから手術が推奨される場合もあります。

このように大きな病気であっても元気がない以外に特徴的な症状がないということも多くあります。

元気がないだけの場合は診断にいろんな検査が必要なことがある

足を痛そうにしている場合は触診だけでもある程度の診断の予測が可能です。また前日に人間のご飯を食べた後から下痢が始まったという場合は状況から食物関連の消化器症状と予想できるため、最初の段階でそれ程多くの検査を必要としないかもしません。

 しかし、元気がないことのみを理由に来院した愛犬はしゃべることができないため気持ちが悪いのか、頭が痛いのか、お腹が痛いのかを伝えられません。視診・触診・聴診などで原因のあたりがつけられれば検査を絞って行うことも可能かもしれませんが、大きな病気が隠れているかもしれないことを考えるとあまり検査を絞りすぎるのも病気を見落としてしまう危険性があります。

元気がないことの原因を探るとともに、大きな病気がないかを見逃さないためにも視診、触診、聴診、体温測定に加え血液検査やレントゲン検査、超音波検査や尿検査などのスクリーニング検査が必要になってきます。

日頃の健康診断の結果が診断に重要なことがある

一見検査結果で大きな異常がないように思えても、健康な時に血液検査やレントゲン検査などの健康診断を行っていた場合、その結果との比較によって早期に病気を見つけることが可能な場合があります。

また逆に検査結果で異状が見つかってもそれが以前からあったものかどうかが分かれば、今回の体調不良とは関連がないと判断できる場合もあります。

このように病気の早期発見という観点からも、体調不良時の診断をより迅速に行うという観点からも日頃の定期健診は非常に重要です。

1歳を過ぎたら年に1回、7歳ごろからは年に2回の定期検診を行っておくことをお勧めします。

検査しても異常が見つからなければそれはそれでOK

検査しても明らかな異常がない場合ももちろんあります。その場合、「緊急で対処しなければいけない大きな病気がないことがわかった」ということが重要です。

点滴などの対症療法を行い血液検査、レントゲン検査、超音波検査など一般的なスクリーニング検査では把握できない部分(特に脳や脊髄などの神経疾患)などに注意を払い、経過観察することで安心にもつながります。

また、初診時に様々な理由で例えば血液検査のみ行い、異常が見つからずに対症療法で様子をみることもあるかもしれません。そのような際に対症療法で症状が改善しない場合はレントゲン検査、超音波検査などまだ行っていない検査を追加で行うとよいでしょう。単一の検査では検出できる病気に限りがあることは心にとめておきましょう。

心配なことがあればかかりつけ医に相談

このように「元気がない」という症状が、大きな病気の初期症状である可能性も十分に考えられます。

動物病院に連れて行くと普段と違う環境に、愛犬が興奮して元気になったように感じられることもあるかもしれません。そんなとき、飼い主さんは「ちょっと元気になったからもう少し様子をみよう」という判断をしてしまう前に、お家での愛犬の様子を獣医師にご相談ください。 視診、触診、聴診や体温測定の結果に加え、犬種、年齢、性別、避妊去勢の有無などの状況から可能性のある病気の説明や必要と思われる検査を提案してくれるでしょう。

気軽に相談するできる環境を作るためにも、かかりつけの獣医師と日頃の予防医療や定期健診でのコミュニケーションを通して良好な関係を築いておくことも重要です。

飼い主さんと動物病院が力を合わせて愛犬の健康を守っていけるといいですね。

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