当院で猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断し、治療を行い回復した症例のご紹介です。
日本猫 去勢済みオス 初診時8か月 2か月前に保護猫で迎え入れた
主訴:1週間前から元気がなく、食欲がない、おしっこの色が濃くなった
検査結果(所見)
身体検査:高体温、腹囲膨満
血液検査:貧血、グロブリン高値、ビリルビン高値
レントゲン検査:腹腔内臓器の境界不明瞭化
超音波検査:腹水貯留、腹腔内脂肪の高エコー化
腹水検査:FIPウイルス陽性
上記の検査結果から猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断し、治療を開始しました。
FIPは現在、日本国内でFIP治療薬として承認された薬剤がないため、海外から輸入した国内未承認の薬剤を使用する必要があります。
そのため、国内ではFIPの治療薬として認められていない(今後認められる可能性はあるが現状では承認されていない。承認されていない=効果がない というわけではない)ということを飼い主様にご了承いただいた上で治療を開始する必要があります。
治療開始後数日は注射による投与が望ましい
治療開始時は薬剤を確実に投与するために注射による投与が望ましいです。
これは一般状態がよくない中で経口投与した薬をどれだけ体が吸収してくれるかわからないためです。
また経口投与後に吐いたり下痢をしてしまうと、薬がちゃんと吸収されているのかがさらにわからなくなります。
またFIPの猫は食欲低下や嘔吐・下痢などの消化器症状で脱水を起こしていることも多く、体力回復のために点滴による支持療法も必要です。
そのため、食欲の回復がみられるまでは数日間入院治療を行います。
食欲・元気が回復してきたら内服薬に切り替え自宅ケア
通常数日間で、元気食欲が回復してきます。
そうなれば入院の必要はなくなるため、経口薬を処方し退院となります。
投薬中にも再度体調が悪化する可能性はあるため、慎重な経過観察が必要です。
また2週間に1度通院していただき、血液検査や超音波検査などによる経過観察をおこない、病状が改善・安定しているかどうかを診察します。
どんなに元気になっていても投薬期間は約3か月間で、この間は薬の投与を継続します。
この子は薬の投与開始から2,3日程度で食欲や元気が徐々に回復しはじめ、その後は投薬があること以外は普通の子と同じように元気に生活し、約3か月の投薬を終え、無事に1歳の誕生日を迎えることができました!
2週間おきの定期健診でも血液検査、エコー検査の結果も、貧血やグロブリンの高値なども改善され問題ありませんでした。
あとは年に1~2回の健康診断を行いつつ、今後FIPを再発しないことを願うばかりです。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療でお困りの方はご相談ください。