わんちゃん、ねこちゃんを飼っていると体の表面にできものができているのを見つけることがあると思います。
痛そうだったり気にする様子もないし、ということで様子をみているといつの間にか大きくなってしまっているということも多いです。
できものは腫瘍性病変と非腫瘍性病変に分けられ、また腫瘍性病変は良性腫瘍と悪性腫瘍(癌)に大きく分けられます。
病変をみつけたら、その病変が何であるかを検査する必要があります。
細胞診
一つ目の方法は細胞診です。
細胞診はできものに針を刺して陰圧をかけ、できものの中にある細胞を採取し、検査します。
細胞診のメリットは
- 麻酔の必要がなく、簡単に行える
- 患者の痛みなどが少なく、負担が少ない
- 同時に複数個所の病変を繰り返し検査することができる
- 病変の種類によっては診断が確定し、手術計画や治療方針の決定に役立つ
- 麻酔の必要がないため比較的安価に検査ができる
細胞診のデメリットは
- 目の近くなど、場所によっては細胞診であっても沈静や麻酔が必要になる
- 病変が小さすぎたり厚みがない病変だと針を刺して細胞が取れない
- できものの種類によってはうまく細胞が取れないことがある
- 病変を代表する細胞が取れないことがある
- 病変の全体像が見えないため、確定診断には病理検査が必要になることもある
組織病理検査
2つ目の方法は組織病理検査です。
組織病理検査とはできもの全体あるいはその一部をスライスしてその中の細胞の種類や細胞がどのように配置しているかなど全体像からのその病変が何かを特定する検査です。
組織病理検査のメリットは
- 病変の全体像が把握できるため、正確な診断ができる
- 診断が非腫瘍性病変や良性腫瘍であれば切除したこと自体が治療を完結したことになる
- 細胞診が難しい小さな病変や厚みのない病変でも検査ができる
- 動くと採材が難しい瞼など、あらゆる場所の検査が、全身麻酔をかけるため安全にできる
組織病理検査のデメリットは
- 病変を切除するために全身麻酔が必要
- 病変の部位や範囲によって大小はあるが、患者の痛みや負担が細胞診よりも大きい
- 術前検査、麻酔、手術、病理検査などで費用がかかる
非腫瘍性病変や良性腫瘍であれば、病変を気にして舐めてしまったり、感染を起こして膿んだりしなければ経過観察で問題ありません。
しかしそのような腫瘤も時にどんどん大きくなり、本人が気にして舐めてしまい炎症を起こしてしまったり、生活の質を下げてしまう場合には手術により病変を取り除いてあげる必要があります。
症例:トイプードル 6歳 去勢済みオス
この症例は、前足のひじの近くにできものができて、徐々に大きくなり、また本人も気になって舐めるようになってしまったということで相談され、検査、手術を行ったわんちゃんです。
細胞診
診断:明らかな炎症像や異常細胞は検出されない
この症例では細胞診ではうまく細胞が採取できずに診断には至りませんでした。
しかし、肥満細胞腫やリンパ腫などの悪性でかつ細胞が取れやすい腫瘍ではないことはわかりました。
※肥満細胞腫であれば腫瘍細胞が散らばりやすく、手術の際に再発を極力避けるため、腫瘍の肉眼的境界からより広めに組織を切除する必要があります。
手術
組織病理検査
診断:繊維付属器過誤腫
非腫瘍性の増殖病変で、臨床的挙動は良性であり、完全切除によって一般的に治癒します。
近隣の真皮で、角質または他の挫滅組織が漏出することによって、二次性に通常無菌の炎症性反応を引き起こすことがあり、今回はそのために気にして舐めるようになっていたのかもしれません。
結果
組織病理検査の結果も悪いものではなく、病変も取り切れているという評価だったので、今後の再発の可能性も低く経過は良好と予想されます。
まとめ
腫瘍の中には悪性で、切除する際に腫瘍の肉眼的な境界よりもはるかに大きく切除する必要がある腫瘍もあります。
また、大きくなるにつれ転移のリスクが上がりますので「もう少し大きくなってから検査など考えよう」とはせず、できるだけ早い段階で検査することも重要です。
わんちゃん、ねこちゃんのしこりでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。