猫の膀胱結石

【閲覧にあたり、ページ内の一部に疾患の状態や手術中の様子を示す写真が含まれることをご留意ください】

ノルウェージャンフォレストキャット
2才 2ヶ月 避妊済みメス

数日前からの血尿と頻尿の症状で来院されました。

1年ほど前にも同様の症状があり、その際には超音波検査で結石はないものの膀胱内に細かな沈殿物がある状態でした。膀胱内の尿貯留が少ないため採尿ができず尿検査ができませんでしたが、皮下輸液などの対処療法ですぐに症状が改善されたとのことでした。

ところが今回は画像検査(レントゲン検査・超音波検査)で膀胱内に複数の結石が見つかりました。

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膀胱内に結石が見つかった際の治療法は動物の場合大きく2つです。食事療法などで結石を溶かすか手術で結石を取り除くか。前者の場合には前提として結石が解けるタイプの結石である必要があります。

膀胱結石で多いのは

  1. ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)―アルカリ尿でできやすく尿を酸性にすることで溶かすことができる
  2. シュウ酸カルシウム―酸性の尿でできやすく溶かすことができない

ですが、単純にどちらかというわけでなく混ざっている場合もあります。また、その他の結石もあります。

結石が溶けるタイプかどうかを調べるにあたってほとんどの場合、膀胱の中にある結石自体を調べることができないため尿検査から推測するしかありません。

今回の症例の尿検査では結石はあるものの結晶はみられなかったため結晶から結石を予想することもできません。(しかも必ずしも尿中の結晶と結石が同じ成分であるとは限りません)また、PHは6.5とやや酸性でしたのでどちらかというと溶けないタイプのカルシウム結石が疑われました。(解けるタイプのストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石はアルカリ性でできやすい。逆に溶けないタイプのシュウ酸カルシウム結石は酸性でできやすい。しかし尿がPH6(弱酸性)でもストラバイトがみられる症例もいるためPHで結石の成分を判断することもできません。あくまで予測です。)

飼い主様には結石が原因で膀胱炎を起こしていること、超音波検査、レントゲン検査、尿検査から結石の成分を断定することはできませんが、尿がやや酸性寄りなので溶けないカルシウム結石の可能性が高いです。しかし溶けるタイプの結石である可能性も否定できないため食事療法等で結石が溶けるか経過観察する方法もあります、とお伝えしました。

相談の結果、溶けるかどうかわからないこと、溶けるとしても溶けるまでには時間を要することから手術を希望されました。

手術画像につき閲覧注意!

合計4つの結石を摘出しましたが、開腹した際に膀胱の腹側(おなか側)の血管が目立つのがわかります。これは結石により膀胱の壁が刺激を受け慢性的に炎症していた結果です。

手術写真につき閲覧注意!

症状はなくとも膀胱の痛みや違和感はあっただろうと思われます。

手術写真につき閲覧注意!
手術写真につき閲覧注意!

結石分析の結果、この子は溶けるタイプのリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)が100%でした。

術後は数日間、点滴を流しながら尿道カテーテルを設置し、なるべく膀胱内に濃いおしっこが溜まらないように管理します。(尿が濃いと膀胱粘膜の縫合部に炎症や縫合糸の劣化を招き、膀胱におしっこが過度に溜まると膀胱の縫合部にテンションががかってしまいます。)

今後も療法食による食事管理や飲水量を増やす工夫、栄養過多の改善などによる再発予防は必要です。

繰り返す頻尿あるいは血尿がある場合は、結石や腫瘍が原因の可能性があります。皮下輸液や抗菌薬の処方などの対処療法だけで画像の検査をしていない場合、見逃がされているケースもよく見かけます。心当たりのある場合はご相談ください。

結石は症状が出るまで気付かないことがほとんどです。
今回の症例のように手術にならないためには若いうちから健康診断で血液検査だけでなく尿検査やレントゲン検査・超音波検査なども行っておくことが重要です。


また、ロイヤルカナンから猫砂に少量混ぜておくと、目に見えない尿中の血液成分を検出する尿中ヘモグロビンチェッカーという製品もあります。(これなら症状が出ていない膀胱炎も検知することができます!!)
当院でも取り扱っておりますので、特に膀胱炎を起こしたことがある猫ちゃんは是非ご活用ください!

泌尿器科

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