今回は、誤ってプラスチックを飲み込んでしまった犬の症例です。
病院にお電話があり、つい先ほど散歩中にプラスチックのキャップのような物を飲み込んでしまったようです。
すぐに来院していただきお話を伺ったところ、15分ほど前にペットボトルのキャップかそれよりも少し小さなプラスチックのようなものを飲み込んでしまったとのことでした。
来院されたのが12時半頃で、朝はごはんも食べているとのことでした。
レントゲン検査
プラスチックは金属や石とは違いレントゲンで写りにくいものですので、この状況でレントゲンを撮影したとしてもプラスチックに関しては何の情報も得られないかもしれません。
しかし、異物を誤食する子は他にも何か食べているかもしれないため、その後の処置をするにあたっては事前にレントゲンを撮影しておくことは十分に意味があります。
レントゲンを撮影したところ、右ラテラル像にて異物を疑う人工的な直線・直角の陰影が胃内に確認できました。(VD像では確認できません)
また、レントゲンに写るその他の異物(金属や石など)がないことも確認できました。
催吐処置
今回、次に行うことは催吐処置です。
ある薬を急速に静脈内投与すると8割~9割の確率で嘔吐がおこり、副作用もあまり出ないことから催吐処置としてよく使われる方法です。催吐のための薬というわけではありません。
(※ちなみに、昔は催吐処置として食塩やオキシドールを飲ませたりしていましたが、現在では副作用が強く推奨されません。)
また、催吐処置を行う際に吐かせてよいものなのかどうかということも考える必要があります。
あまり角ばっていないそれほど大きくない異物であれば、それほどリスクなく催吐処置を行うことが可能です。
しかし、竹串や裁縫の針などの鋭利な異物は、吐かせる際に食道を傷つける危険性を十分に考慮する必要がありますし、また飼い主様にそのようなリスクを説明したうえで内視鏡による摘出など他の選択肢も検討する必要があります。
また、電池や消毒剤、洗剤などは催吐行うことで食道や咽頭、口腔の炎症を起こす可能性があり、催吐自体が禁忌である場合があり注意が必要です。
プラスチック以外にも湿布を嘔吐
今回の症例は、1回催吐処置を行ったところ、4,5回の嘔吐をしましたが、吐いたものは朝ご飯のみで異物は含まれていませんでした。
これだけ吐いたのに異物が出てこないので諦めようかと迷いましたが、処置前のレントゲンには胃内に確かに異物を疑う陰影があったため、もう一度催吐処置を行うことにしました。
すると見事に黒いプラスチック製のキャップ(おそらく自転車のハブのカバー)を吐いてくれました!
こちらもうまく吐かせることが出来て嬉しくて、すぐに飼い主様を呼んで無事に吐いてくれました!と吐いたものを見せてお話していると黒いプラスチックの横に何やら別の異物が!
よくよく見ると湿布がまるっと出てきていました。
異物摂取してしまう子にはよくありますが、今回のように思ってたものと違うものも出てくることよくあります。
湿布はまだ変色しておらず新しそうだったので、今朝飲み込んだ可能性もあり、湿布に含まれる成分で中毒症状を起こさないよう点滴も行いました。
まとめ
ペットが何かを誤食してしまった場合、何を飲み込んだかによって処置の内容が変わってきます。
誤った処置をしてしまうと逆に状況を悪化させてしまうかもしれません。
また、どんな処置をするにしても早いに越したことはありません。
ペットが誤食したと気づいた場合、早めに動物っ病院にご相談ください。
また来院時には誤食したものがどんなものなのか分かるよう、同じ物があればその物をお持ちください。
同じものが無ければ、大きさ、形、商品名などの情報を教えていただくことで、リスクを最小限にした処置が可能となります。
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