寄生虫

今回はよくみる寄生虫のお話です。

寄生虫といっても種類はたくさんあり、皆さんがよく耳にするのはノミ・マダニ・フィラリアではないでしょうか?

ノミ・マダニは通年の予防、フィラリアは当院のある埼玉県では5月から12月(8か月間)の予防が必要です。これらの寄生虫については予防医療のページに詳しく書いてあるのでそちらをご覧ください。→ <ノミ予防> <マダニ予防> <フィラリア予防>

今回ご紹介するのはノミ・マダニ・フィラリア以外で、意外とよく遭遇する寄生虫たちです。

ミミヒゼンダニ

まずはミミダニです。
ミミヒゼンダニや耳疥癬とも呼ばれるこのダニは耳の穴の中に寄生し、耳垢を食べて生活します。
寄生された動物の体は、正常な反応として耳の皮膚の代謝を早め、耳垢と一緒にダニを排除しようとするため、耳垢が増えます。黒っぽい耳垢の増加とともにダニに対するアレルギーも相まって外耳炎を起こし、激しいかゆみを伴います。
黒い耳垢をよ~く目を凝らして見るとちっちゃい白い点が動いているのが見えることがありますが診断は顕微鏡で行います。
ミミダニの寄生が確認されたら猫であればネクスガードコンボやレボリューションプラス、犬であればレボリューションやシンパリカなどを投与することで駆虫します。

次におなかの中の寄生虫です。

この時期は野良の子猫が生まれてお母さんと逸れてしまったのか保護され、健康チェックのために動物病院に連れて来られる方が多いです。その際に必ず便検査をするのですが子猫のウンチは寄生虫に出会える確率が非常に高いです。

左:回虫卵 右:コクシジウム の混合感染

よくみる消化管内寄生虫には原虫、線虫、条虫がいます。原虫にはコクシジウムやジアルジア・トリコモナスが、線虫には回虫、鈎虫、鞭虫が、条虫には瓜実条虫、マンソン裂頭条虫などがいます。

コクシジウム、ジアルジアなどは慢性的な下痢症状で病院に来た時に便検査で見つかることが多いですが、回虫や条虫などは下痢ではないけれど「便の中に細い糸みたいなのが出てきた」や「便の表面に米粒みたいなものがついていてよく見ると動いている」という主訴で来られる場合も多いです。逆に言うとこういったものが便と一緒に出て来なければ気づかずに見過ごされている可能性もあるということです。

左:瓜実条虫卵 右:コクシジウム の混合感染

ちなみに瓜実条虫は体に寄生した瓜実条虫の卵を食べたノミを口から摂取することで感染します。
まずノミの幼虫は動物のフケなどの蛋白源を栄養にするので瓜実条虫の変節という卵がいっぱい入った袋(動物の便の表面にくっついて排泄される)も食べます(ノミに寄生完了)。次に成虫になったノミは吸血することにより犬や猫にアレルギーを起こし、痒くてしきりに体をなめるのでノミを口から摂取しやすいというわけです(ノミという乗り物に乗って犬や猫に寄生が完了)。
よくできていますね。

野良猫を拾って飼い始めた場合などは特に、動物病院で便検査や駆虫・寄生虫予防をしっかりと行ってください。
ペットショップやブリーダーから子猫を迎えた、という場合にも意外と感染していることが多いのも要注意です。

また、完全に室内飼いの犬や猫でもこういった寄生虫に感染している症例をみます。完全に室内飼いだから予防は必要ないです、という飼い主様に遭遇した時には、もし感染しちゃったら後が大変だよ、と内心思います。そしてノミやマダニは人にうつる病原体の媒介もするため、動物病院やトリミングを受診する可能性のあるわんちゃんねこちゃんは予防が必要です。実際に動物医療関係者がマダニ媒介性のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスに感染するという事例が起きています。

ノミ・マダニ予防をお勧めするのはわんちゃんやねこちゃん本人やご家族のためだけではありません。飼い主様には我々動物医療スタッフやトリマーの健康を守るためにもノミ・マダニの予防を軽視しないようお願いいたします。

当院のトリミングやペットホテルをご利用の場合にはご利用の1か月以内の寄生虫予防が必要となりますので事前にご相談ください。

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