今回は乳歯遺残と不正咬合のお話です。
10ヵ月 ポメラニアン 未去勢オス(保護犬) この子は飼育放棄により保護された子です。
譲渡に向け去勢手術をするために診察した際多くの乳歯遺残が見つかりました。
乳歯遺残は上顎と下顎の噛み合わせを悪くすることなどにより歯石が付きやすくなり、将来歯周病になるリスクが上がります。
また、この子のように下顎犬歯の乳歯が残存している場合、永久歯が本来よりも内側に生えてきてしまい、下顎犬歯の永久歯が上顎に突き刺さるように伸びてきてしまいます。
ですので乳歯遺残がある場合には適切な時期に乳歯を抜歯してあげる必要があります。
乳歯遺残かどうかを判断する月齢はおおよそ8か月です。永久歯は6~7ヵ月齢で生えそろい、通常であれば永久歯が生えて1~2週間で乳歯は抜けるはずです。そのため8ヵ月齢を超えて乳歯が残っている場合には自然には抜けない乳歯遺残と判断し抜歯を行う必要があります。
避妊・去勢手術を行う適切な時期は、性成熟して初回発情する前なので、生後6か月をむかえる前が良いでしょう。
ということはすでに生後8か月を超えているにもかかわらず避妊・去勢手術を行っていない場合を除いて、避妊・去勢手術と乳歯抜歯は同じタイミングではできないことになります。
どうしても麻酔を1回で終わらせたい場合は生後8か月まで待つか、でもそうすると乳腺腫瘍やマーキングのリスクが上がる可能性があるしな…
乳歯がしっかり生えていて自然に抜けそうにない場合は獣医師にご相談ください!
この子の場合、乳歯と永久歯が併存している期間がある程度長く、下顎の犬歯に関しては乳歯を抜歯しただけでは永久歯の生え方が内側に向きすぎていて、上顎に刺さるように伸びてしまいます。そのため永久歯が上顎に刺さらないように、少し外側に向きを変えるように歯科矯正を行いました。
この処置は経過によっては数回繰り返す必要があることもあり、経過観察が必要です。
術後でまだウトウトしているチョビ君。お疲れさまでした!