野良猫を保護したら必ずやらなければならないことが3つあります。
①保護したあとはなるべく早く動物病院で診察を受ける
保護した猫はなるべく早く動物病院へ連れて行きます。
感染症にかかっていないか、ノミ・マダニや消化管内寄生虫など人にも害をもたらす可能性のある寄生虫が感染していないかなど、健康状態をチェックするためです。
保護した猫の健康状態を把握することは、その後の世話にも役立ちますし、すでに猫を飼っている場合は先住猫への感染を防ぐこともできます。また、新しい飼い主を探す際には健康状態に問題がないことをある程度証明しなければなりません。
また、状態が悪くて保護された場合は全身状態の把握のため、血液検査やレントゲン検査が必要なこともあります。
初診時の検査・処置
・便検査
・ミミダニ検査
・ノミ/マダニ予防薬投与
・消化管内寄生虫駆虫薬投与
・猫エイズウイルス/猫白血病ウイルス検査
・混合ワクチン など
初診時に動物病院でかかる費用は、初診診察料・便検査・ミミダニ検査・ノミ/マダニ予防薬の投与・消化管内寄生虫駆虫薬の投与の場合で、当院であれば8,000円前後(税抜き)です。
年齢や状態によって猫エイズ/白血病ウイルス検査、混合ワクチン摂取をしたり点滴や入院をお勧めする場合もあります。
また、猫風邪の症状がある場合には内服や点眼の抗菌薬を処方する場合もあります。
②迷い猫ではないか確認する
もし、野良猫ではなく迷い猫であれば、必死に探している方がいるはずです。迷い猫は遺失物法に明記されている通り、逸走した家畜となるため届け出が必要です。保護した猫が迷い猫ではないか、以下のような方法で確認しておきましょう。
・さいたま市内で保護した場合、さいたま市動物愛護ふれあいセンター(048-840-4150)へ問い合わせる
・保護した場所の最寄りの警察署に迷子の問い合わせがないか確認する。
・SNSやネットの掲示板に迷い猫情報がないか確認する
・動物病院を受診しマイクロチップの有無を確認する
保健所や警察署に問い合わせをし、迷い猫かどうか確認します。迷い猫とわかったときは、届け出をして預かり飼育という形になります。
SNSや掲示板などにも迷い猫の情報が拡散されることが多くなっています。保護した猫が掲載されている可能性もあるので、確認しておきましょう。
動物病院を受診した際にマイクロチップの有無を確認してもらいます。マイクロチップが挿入されていれば飼い主情報を検索できます。(マイクロチップが挿入されていても飼い主情報が登録されていない場合もあります)
また捕獲したのち、不妊手術などをしてから元の場所に戻し見守っている地域猫の場合もあります。地域猫の場合、不妊手術済である事の証としてオスであれば右耳、メスであれば左耳の先端を桜の花びらのようにカットしてあります。そのようなときは、地域で世話をしている団体があるはずです。地域のボランティア団体などがないか調べて連絡し、確認しておくとよいでしょう。
③自分で飼育できるかどうか考える
子猫や弱っている猫を保護したからといって全ての方がその後の面倒をみることができるとは限りません。
ペット飼育ができないお家に住んでいたり、自身やご家族に猫アレルギーがあったりして飼えない場合もあるかと思います。
そんな場合には保護した猫を引き取って家族に迎えてくれる人を探さなければなりません。
※当院では猫ちゃんをお預かりし、ノミ・マダニ予防、消化管内寄生虫の駆虫、混合ワクチン、避妊・去勢を行なった後に新しい飼い主様を探すことも可能です。
※当院で保護猫をお引き受けする場合、医療費や新しい飼い主様が見つかるまでの飼育費用を、保護された方に一部ご負担いただくこととなります。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
猫を飼うときに最低限必要なもの
保護した猫を受け入れて飼育することになったら、猫を飼育するための環境を整える必要があります。
まずは不必要なストレスを与えないために、静かで落ち着ける場所を用意します。
そして下のようなグッズを用意しておくといいでしょう。
ケージ | 保護してきたばかりの猫は人に慣れていないことも多く、安心できるねこちゃんのスペースとしてケージを用意してあげましょう。 幼猫の場合、脱走できなければダンボールでも構いません。 |
キャリー | 保護してしばらくの間はワクチン摂取、ノミ・マダニ予防、下痢などの体調不良で動物病院に頻繁に通うこととなります。 仔猫も半年もすると大きくなりますので一般的な大きさのキャリーを用意するのが良いでしょう。 |
トイレ | ねこちゃんは砂を掘って排泄し、砂をかけて排泄物を隠す習性があります。 トイレが気に入らないとストレスや尿路疾患の原因になることもありますので十分な広さのトイレを用意しましょう。 |
食器 | 人用の食器だとサイズが合わなかったり倒れて割れやすかったりするので専用の食器を用意しましょう。 |
フード | その子の年齢に合わせたフード選びが重要です。 |
ミルク | 離乳ができていない仔猫や離乳の時期でミルクを混ぜた方がよく食べてくれる仔に必要です。 |
おもちゃ | 子猫は特に遊びが大好きです。成猫も一緒に遊んであげることで早く心を許してくれるかもしれません。 |
グルーミング用品 | 仲のいい猫同士お互いをグルーミングします。 触らせてくれるようになったら次はグルーミングで距離を縮めるのもいいかもしれません。 |
このほかにもあると便利なものはありますが、まずは猫が暮らしていくのに最低限必要なものを用意して、生活していく中で必要になった都度、買い足していくのがおすすめです。
野良猫を保護して飼うときの6つの注意点
保護した野良猫を飼う上で注意したい点を6つご紹介します。
さまざまなことに注意し、猫と人とが気持ちよく過ごせるようにしましょう。
①すぐになつく可能性は低いので根気よく
保護した猫が子猫なら、なついてくれるのに時間はかからないかもしれません。しかし大人の猫の場合そうはいきません。
人間と暮らすことに慣れていないばかりか、部屋の中という閉鎖的な空間で過ごすことになじめない場合も少なくありません。
また、警戒するあまり食事をしなくなってしまうこともあります。
ことを急がず、距離を保ちつつ根気よく向き合う必要があります。
②先住猫に病気が感染する可能性がある
保護したら必ず動物病院へ連れて行きましょう。
特にすでに猫を飼っている場合は、先住猫に病気を感染させてしまう可能性があります。
病院を受診し、感染症の心配がなくなるまでは先住猫との接触を避け、別の部屋に隔離しましょう。
③お風呂はストレスの原因に?
元は野良猫だったので、お風呂が苦手という場合が多くあります。お風呂、シャンプーは大きなストレスとなります。
汚れが気になってシャンプーしてあげたいと思うかもしれませんが、体への負担も大きいため慣れるまではお風呂はやめておいたほうが無難です。
また、ノミやマダニなどの害虫はシャンプーでは取り切れません。病院で処方された駆除薬を使用しましょう。
④トイレのしつけは根気よく
室内で飼育していくには、トイレのしつけも必要になります。しかし元は野良猫です。すぐにはうまくいかないかもしれません。
部屋の中を落ち着きなく歩いている仕草が見られるときに、トイレに連れて行くなどして少しずつ覚えてもらいます。
初めのうちは粗相をすることも多いですが、根気よく教えましょう。
⑤不妊手術を行う
昨今、ニュースなどテレビ番組でも話題となっている多頭飼育崩壊。
これは無秩序な多頭飼育の末、異常繁殖をしてしまい飼育不可能になることをいいます。
このような悲しい状況を防ぐためにも、不妊手術などを適切に行う必要があります。
また、1頭での飼育の場合であっても避妊・去勢手術をすることにより、発情のストレスから開放されたり性ホルモンに関連する病気を予防することにもつながります。詳しくは避妊・去勢についてをご参照ください。
⑥必ず最後まで責任を持つ
猫と暮らすにはそれなりに費用がかかり世話も大変です。しかし保護したからには、その猫が一生を終えるまで責任を持って共に暮らしていく覚悟が必要です。
病気になって思わぬ医療費がかかることも想定しておかなければなりません。そんな時に十分な医療を受けさせてあげられるようにペット保険に加入しておくこともお勧めします。
大変な状況にあった野良猫を保護したときのやさしい気持ちを忘れずに、最期まで愛情をもって一緒に過ごしましょう。
野良猫を保護!でも自分では飼えない場合は・・・
まず大前提として、「動物病院や保護団体にお願いすればいいや」という軽い気持ちで野良猫を保護しないようお願いします。
病気を持っている猫や高齢の猫は新しい里親を探すのが非常に難しい場合が多く、受け入れ先が見つからない可能性もあります。
そんな状況でも、「受け入れ先が見つかるまではしっかりと自分が面倒を見るんだ」という覚悟をもって保護しなければ、逆に無責任な保護ともとられかねません。
それでも放って置けない状態の野良猫を保護したけれど、家族の事情や先住猫との相性などさまざまな理由で飼うことができない、ということは起こりえます。しかし、保護した野良猫を放り出すわけにはいきません。そんなときはどうしたらいいでしょうか。
動物病院に相談する
動物病院に行くと、迷い猫の情報や里親募集の貼り紙を目にすることがあります。
動物病院には動物好きが多く集まるので、保護猫に関心のある方も多い可能性があります。貼り紙をしてもらうことで、新しい飼い主が見つかるかもしれません。
新しい飼い主が見つかるまでの間、動物病院に預ける場合には、健康で世話がかからない仔でもホテル代、離乳ができていない幼猫や緊張で食事を食べずに点滴が必要な場合には入院費や処置代がかかってきます。この費用は保護された方の負担となります。
保健所に連絡して保護してもらうことも可能ですが、引き取り手が見つからなければ殺処分されてしまうこともあるため、お近くの動物病院に相談してみるのもいいかもしれません。
保護団体や保護施設に連絡する
お住まいの地域の自治体の動物愛護相談センターに連絡してみましょう。
地元の動物愛護団体などと連携を取り、殺処分を減らす取り組みをしています。
さいたま市では「動物愛護ふれあいセンター」がそれにあたり、犬猫の収容、譲渡事業、動物愛護に関するイベントやしつけ教室などさまざまな活動を行っています。
また、地元の動物愛護団体(NGOやNPOなど)に連絡し相談してみるのもいいかもしれません。
※当院では保護猫をお預かりし、新しい飼い主を探すことも可能です。(※生後1.5ヵ月未満の場合でケージに余裕がある場合に限ります)
※新しい飼い主様に譲渡する前には必ずノミ・マダニ予防、消化管内寄生虫の駆虫、混合ワクチン、避妊・去勢を行います。
※当院で保護猫をお引き受けする場合、医療費や飼育費用の一部を保護された方に負担していただくこととなります。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
インターネットなどで里親を探す
里親募集サイトやSNSで里親を探す方法もあります。
里親募集サイトもたくさんあるので、動物に対する考え方、譲渡の実績、譲渡・飼育についての条件面など、信頼のおけるサイトなのかしっかり見極めましょう。
SNSで募集する際は、譲渡に関する条件など詳細を掲載することになります。
例としては下のような条件が考えられます。
・猫の里親になることを同居家族は同意しているか
・同居家族に猫アレルギーの人はいないか
・ペット飼育可能な住宅に住んでいるか
・完全室内飼育が可能か
・避妊手術、予防接種など必要な医療を施してくれるか
・家族の一員として、生涯愛を持って育ててくれるか
なかには虐待目的やクレームをつけて、金銭を要求したり転売をしたりなど心ない人がいます。譲渡先とはしっかりやり取りをして見極めましょう。
※多くの保護団体・愛護団体では譲渡の際に面会や住居の確認、家族構成なども確認し、厳しい基準のもと譲渡可能かどうかを判断します。そういった面で個人でインターネットを通じて里親を探すよりも猫ちゃんにとって安心できるかもしれません。
まとめ
野良猫を保護して飼う場合、保護したけれど飼えない場合についてご紹介しました。
保護して飼うにしても、譲渡先を探すにしても大変なことです。
保護した猫ちゃんが幸せに暮らすためになにが最善なのか、全ての猫ちゃんで同じとは限りません。
この記事が猫を保護された方と保護された猫ちゃんのお役に立てば幸いです。