チワワ 8歳 未避妊メス
今回の症例は夜間救急の電話をいただいて深夜0時ぐらいに病院に到着した症例です。
1週間ほど前から食欲元気が落ちていて、夜になりぐったりしたということで来院されました。
到着時には昏睡状態で今にも呼吸が止まりそうな状況で、すぐに酸素吸入を開始しながら血管確保を行いました。
血管確保中に状況を聞きながら、腹部の膨満感や陰部からの排膿の状況、未避妊の状況から子宮蓄膿症と仮診断しました。
また、敗血症による低血糖、低血圧が起こっているだろうと判断してグルコースの急速投与とグルコース入りの静脈輸液を開始すると呼吸は安定して意識も戻りました。
その後は状態も安定したのでゆっくりと血液検査とレントゲン検査、エコー検査を行い、やはり子宮蓄膿症であることや貧血(ヘマトクリット 19.8%)、低アルブミン血症(ALB 1.5g/dL)など重症であることを確認しました。
子宮蓄膿症とわかると一分一秒でも早く手術をするという選択もありますが、今回の症例ではまず状態の安定化に努めました。
一命をとりとめたばかりの状態ですぐに麻酔をかけると血圧の低下等、麻酔の安定も得られず、術中・術後の合併症のリスクが高まります。
今回の症例では、翌日まで通常の点滴や昇圧剤の持続点滴、抗菌薬の投与をしっかり行い、脱水や血圧などの状況がある程度改善したところで全身麻酔をかけて開腹にて膿が溜まった子宮を卵巣と一緒に切除しました。
術後は日に日に元気や食欲も改善し、脳障害や腎障害などの合併症もなく回復してくれました。
このように救命救急の色が強い症例では、状態が安定するまでは、ほぼ毎日血液検査や必要に応じて超音波検査などを行い、術後の合併症などが起きていないかを慎重にモニタリングする必要があるため、経過が順調でも入院期間が10日~2週間程度とやや長くなります。
低血圧、DICや腎障害など術後の合併症を見逃すと、せっかく手術を頑張ってくれたのに合併症で命を落としかねません。
当院では重症の子宮蓄膿症の症例も、昇圧剤やDICの治療などにより合併症を最小限に手術を行っております。
とはいえ、まずは子宮蓄膿症になる前に、元気なうちに避妊手術をお願いします!!!