猫の尿管結石

【閲覧にあたり、ページ内の一部に疾患の状態や手術中の様子を示す写真が含まれることをご留意ください】

アメリカンショートヘア 3歳 去勢オス
尿管結石により腎障害を起こしかけていて、手術により尿管結石を摘出した症例です。

急な食欲低下により他院を受診し、血液検査を行った結果、特に異常がなく皮下点滴をして帰宅。しかし翌日も食欲の改善がなくセカンドオピニオンとして当院を受診されました。

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レントゲン検査で尿管結石を認めた

前日に血液検査を行っていたため、当院ではレントゲン検査と超音波検査をさせていただきました。その結果、尿管結石を疑う陰影がレントゲン検査で見つかりました。しかし、超音波検査では明らかな尿管や腎盂の拡張は認められず、症状との関連は断定できませんでした。
人では尿管結石は腰の痛みとして症状が出るようです。
動物の場合、一般的に尿管結石は重度の腎障害と共にみつかることが多いです。片方の腎臓がすでに大部分の機能を失っている状況で、もう片方の尿管に結石が詰まってしまうことで腎臓の数値が跳ね上がり、緊急的な処置や手術が必要となります。
この症例は血液検査では腎数値の上昇がないため、急性腎障害による食欲低下ではありませんが、尿管結石の痛みが食欲低下の原因になっている可能性があるため、1日静脈輸液を行い経過観察させていただくこととなりました。
翌日の超音波検査では右の腎盂の拡張と尿管の拡張が顕著に認められ、右の尿管結石であることが分かりました。(おそらく完全な閉塞ではなく結石の脇を通って尿が流れられる状態だったのだと思われます。)
尿管結石が今回の症状の原因であるかは断定はできませんが、このまま放置すれば右の腎臓の機能はどんどん低下していくことが予想されます。今後の右の腎臓のことを考えると手術により、尿管結石を取り除くことが必要と判断されました。
わけあって手術の日程が尿管結石の確定から2日ほど遅れてしまい、その間は皮下点滴で食欲低下に対処していましたが、その間に腎数値がやや上昇(CRE 1.8→2.8)しました。これは閉塞していない左の腎臓の機能がすでに半分ほど低下している可能性を示唆します。(腎臓は機能の75%が失われて初めて基準値を超えてきます)
より、右の腎臓の機能を可能な限り温存することが重要になってきます。

閲覧注意!)拡張した尿管

手術はまずお腹を開けて拡張した尿管を確認します。尿管が拡張している部分とそうでない部分の間に結石が詰まっていると考えられるため、そのあたりを触り、結石を蝕知することで見つけます。

(閲覧注意!)尿管内の結石を触知、目視で確認

結石がみつかったら尿管を切開し、結石を摘出します。(この症例では大小2つの結石が摘出されました。)

(閲覧注意!)尿管を切開し結石を摘出

次に尿管の切開部からカテーテルを挿入し、腎臓方向・膀胱方向に生理食塩水をフラッシュし、その他に尿管の閉塞がないかどうかを念入りに確認します。

(閲覧注意!)カテーテルから生理食塩水をフラッシュし尿管の閉塞がないか確認

尿管の閉塞がないことを確認できたら切開部を縫合します。

(閲覧注意!)縫合後の尿管

尿管結石摘出後は上昇していた腎臓の数値も下がり、右尿管結石により腎数値が上昇したことが分かります。
結石分析では溶けないタイプの結石であることが分かりました。腎臓にも結石がありますし、今後は結石に対する療法食を食べることと、飲水量をしっかり保ち尿を濃くしないことにより新たに結石を作らせないようにすることが非常に重要です。

低下していた食欲も改善し、尿管の拡張は尿管が確認困難なほど正常になり、腎数値も結石で上昇する前の数値に戻りました。
早期発見により、腎機能を最大限維持することができた症例です。
このように早期発見・治療を成功させるためには初診の段階からしっかりと検査を行い、原因を特定し、治療プランを組み立てることが重要です。

尿管から摘出した結石

おそらくこの症例は検査をせずに皮下輸液などの対症療法を行っていたとしても何となく回復していったと思われます。(実際にOPE前日には食欲は回復していたそうです。)しかしその場合、尿管結石により水腎症となり腎機能がどんどん低下していき、気づいたときには進行した慢性腎臓病となっていたでしょう。

動物は会話することができないので体調不良の原因特定にはある程度しっかりとした検査が必要です。
一般的には血液検査、レントゲン検査、超音波検査、尿検査ですが、「検査をせずに対症療法でもう少し様子をみよう」という判断が後に大きな後悔となることもあるということを心の片隅に置いておくとよいでしょう。

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